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直撃インタビュー

都内でも有数の規模を誇る商店街、戸越銀座にある「ゆう歯科・矯正歯科」は、町の歯医者さんとしての治療を行う一方で、親知らずの抜歯にも力を入れている。親知らずに関しては、これまで数千件の抜歯を経験してきた実績を持つドクターに、親知らず抜歯への想いを伺った。

歯科医を目指したきっかけを教えてください。

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手先が器用で、細かい作業も図工も得意でした。中学生時代に制作した家具を、今でも実家で使ってもらっています。また、実家が歯科医院でしたので、ごく自然に。その頃からはすでに自分は歯科医になるもの、という気持ちでいました。

すると、先生は2代目に、ということに?

いえ、父から「継いでほしい」と言われたことは一度もないんです。地元は秋田なのですが、大学は東京に出て、そのままこちらで働いて開業しましたから、『ゆう歯科』は私で一代目なんですよ。

父が地元に戻ることをすすめなかったのは、競争のある場で頑張れ、という想いがあったからかもしれません。というのも、秋田県人は昔から「事なかれ主義」で、あまり競争をしたがらない。のんびりしているんです。だから、人と違うことをやるのなら、県外に出て、と私自身も考えていました。

結果的に「人と違うこと」が、親知らずの抜歯につながりました。

親知らずの抜歯は、一般的な治療ではないのでしょうか?

実は、開業医には敬遠されがちの治療なんですよ。通っている歯医者さんで親知らずを抜いた方もいらっしゃいますが、最近は大学病院などに紹介されて、そこで抜くことが多い、ちょっと特殊な治療になってしまいました。

確かに、「難しい親知らずは、大学病院や口腔外科の看板を掲げている歯医者さんで抜く」というイメージがありますね。 なぜそのようになってしまったのでしょう。

リスクを避けることを第一に考える歯科医が増えてきたからだと思います。親知らずはふつうに生えているものなら簡単に抜けますが、実際はそのような歯は少なく、斜めになっていたり、歯茎の中に埋没していたりと、結構やっかいなものが多いのです。やっかいな親知らずにあたってしまうと、当然抜くのに時間がかかりますし、出血もひどくなるかもしれない。だったら最初からスタッフも多く、設備が整った大学病院に紹介、となるわけです。

それから、歯科医の経験不足もありますね。親知らずの抜歯は、慣れていないと時間が読めないことがあります。たとえばレントゲンを見たら30分くらいあれば抜ける、と予想していた歯も、始めてみると思いのほか困難で、結局2時間もかかった、というようなことがあると、大学病院に紹介した方が確実と思ってしまう。親知らずの抜歯に対して苦手意識が生じると、親知らず=大学病院、の流れができあがってしまいます。口腔外科の看板を掲げていても、親知らずは大学病院へ、という歯科医は本当に多いんですよ。

先生ご自身が、親知らずの抜歯に関してマイナスイメージを持ったことは?

ありません。ですから、当クリニックでは、親知らずの抜歯に関して、大学病院を紹介したことは一度もないんです。

親知らずの抜歯に興味を持たれたのはいつごろなのでしょう。

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歯科医になって1年目からですね。私は大学を卒業してから、別の大学病院の口腔外科で勤務医をしていたのですが、そこで親知らずの抜歯を学んだことがきっかけになりました。そもそも抜歯というのは、古くは縄文時代からやっていたくらいなので、歯医者が行う治療のなかでは基本中の基本なんです。歯科医である以上、抜歯術を極めるのは当たり前、という気持ちでやっていました。

それからもうひとつ。親知らずの抜歯は、患者様の驚きや感動を伴う治療であることも大きかったですね。虫歯なんかは、削って詰めて、という流れですから、患者さんも何とも思いません。でも親知らずの場合、あっさり抜けると、患者さんから「えっ、こんなに簡単に抜けるんですか」と言われます。驚きや感謝を伴う治療なんですよ。患者さんに喜んでいただけると、歯医者としても嬉しいですから。

遠方から来院される患者さんも多いそうですね。

はい、ホームページをご覧になっていらっしゃる方も多いです。通っている病院で断られたり、大学病院を紹介された、という方がほとんどです。平均すると週に3回は親知らずの抜歯を行っています。

親知らずの抜歯というのは、経験がものをいうのでしょうか。

それもありますが、まず怖がらないでやる、というのが大切でしょうね。怖がってやめたら、もう親知らずは抜けなくなります。それから力とセンスとテクニック。これも必要です。でも抜こうとしなければ、そうしたスキルも身につきません。

親知らず抜歯は先ほども言ったように、ものすごくシンプルな昔ながらの治療法なんですよ。「抜けた」か「抜けなかった」か。抜けなければ負けです。

抜けなかったことはありますか。

ありません。一度では抜けず、2日に分けて抜いたことはありますが、これは本当にレアなケースです。また、ごくまれに、歯の奇形を伴っていて、手こずることはあるにせよ、抜けるものですよ。

先生が持つ親知らず抜歯の技術を、今後はどのように進化させていきたいですか。

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技術的に進化はしないと思います。もう到達するところまでいっていますから、あとは、いかにスマートに抜くか、ということでしょうね。

スマートに抜くというのは、患者様の心理的な負担をいかに減らすか、ということです。一般的に、抜歯は恐怖感が伴う治療で、とくに親知らずの場合は「痛い」「大変そう」「時間がかかる」「トラブルが怖い」というイメージをお持ちの方がほとんどです。それを軽減して差し上げるには、たとえば痛み対策として効果的な電動麻酔の使用や、抜歯中の話しかけ、抜歯のスピードなどがあります。抜くのが速すぎると、逆に負担を感じさせるケースもありますから、タイミングを計りながら、適切なスピードを見極めることも大切です。

なるほど。でも、先生のような親知らず抜歯ができる歯科医は減っているんですよね。

そこなんです。開業医は怖がってどんどんやらなくなっているし、大学病院でも研修医はほとんど親知らずはやりません。すると人が育たない。

しかし一方で、やっかいな親知らずが増えているのも現状なのです。日本人の食生活が変わり、噛む力が弱くなるにつれて、歯がどんどん退化し、親知らずもまともに生えなくなっています。それでも抜かなくてはいけないケースがたくさんあるのに、抜く技術を持った歯科医がいない。これはまずいと思いますね。

インプラントや矯正などは、セミナーなどもたくさんあって、学ぶ歯科医も増えていますが、親知らずの抜歯だけはどんどん敬遠されています。大学でもあまり積極的に教えなくなりました。

抜歯と歯を削る治療は、歯科治療の原点です。これを今一度見直して、勇気をもってやっていくことはとても大切だと思っています。